産地ドイツ バーデン地方
品種 ピノノワール
ヘレンバックの畑にあるリンクリン所有の複数の区画から収穫されたブドウを使用。
野生酵母を用いてステンレスタンクで8日間マセレーション。
ステンレスタンクとオーク樽(大型の楕円形をしたシュトゥック樽とバリック樽)で10ヵ月間熟成。
2018年産からノンフィルターで瓶詰めするようになり、味わいが一層向上した。
いつもお世話になっております。島之内フジマル醸造所の店長の河端です。
やっと秋らしい気候になりレストランのお皿の秋の味覚と季節感がリンクするようになっ
てきました。
私のお腹周りも『食欲の秋』の恩恵を受け、早めの冬支度を・・・。
閑話休題、お客様からオーダー頂くワインも徐々に重心の低いものが増え、季節の移ろいを
感じる日々でございます。
さてソムリエ目線でのオススメワインを紹介するシリーズ、第八回目はこちらのワインを
ご紹介させて頂きます。
【河端とこのワイン】
私がこのワインを初めて飲んだのは 2008 年。
当時勤めていたレストランの先輩ソムリエールさんのイチオシのバイザグラスのアイテム
でした。
このお店で『ナチュラルワイン』に出会い傾倒していく事になるのですが、このリンクリン
も心に残っている生産者さんの1人です。
当時の VT のものは、かなり淡い色調で味わいも淡く酸味も強い、いわゆる薄旨系のテイス
ト。
その頃の私は南イタリアの果実味たっぷりでパンチの効いたフルボディータイプが好きだ
ったので、最初は・・・という印象だったのですが、
ほぼ毎日のように口にするにつれて、
身体に染み入るような優しいテイストにいつしか虜になっていました。
このお店では営業後にみんなで賄いを食べるスタイルだったのですが、その際に
バイザグ
ラスのアイテムをテイスティングして料理に合わせてディスカッションしたり、
先輩から
色々な事を教わったり、このワインを片手にみんなで一緒に愉しんだ
有意義で貴重な時間
も含め良き想い出として残っています。
ずっと飲み続けているワインですが、近年の VT のものは、明らかに濃度が上がって深みが
増し味わいの幅が広がった印象です。
昨今の情勢で値段が上がったとはいえ、未だ驚異のコストパフォーマンスを誇る、
味わいに
は無理がなく素直で、飲み疲れることが無い美しいピノノワールです。
【テイスティングコメント】
色調はルビーレッド。粘性は中程度。
スミレ、チェリー、イチジクのコンフィチュール、ブラッドオレンジの皮、メントール、ほ
んのりシナモン。
トップの口中が潤うようなジューシーでフレッシュな果実味。
酸味は優しく、アフターのタンニンと仄かな苦味が心地よくドライフィニッシュで滑らか
なテクスチャー。
『細身』のタイプのピノノワールでは無く、ある程度の肉付きを感じるミ
ディアムボディー。
飲用適温は 17°C前後が良いと思います。
果実のヴォリューム、渋味もありますので、あまり冷やし過ぎない事をオススメします。
おすすめのグラスの形状は、やや小ぶりなバルーン型です。
香りの広がりも良く、
果実味と酸味と渋みのバランスもとれ全体的にまるく柔らかな印象
になります。
島之内フジマル醸造所のレストランでは『熊本"走る豚"のプティサレ ドライトマトと梅干
しのソース』に合わせてオススメしております。
柔らかな豚の脂と滑らかなテクスチャーが口の中で良き広がりをみせ、程良い酸味・程良い
タンニンが中和的に脂の甘味・旨味を引き立たせ、同調と中和が一緒に楽しめます。
ドライトマトに少し梅干しをアクセントにしたソースも味わいの構成要素が似ていて相性
が良いです。
ちなみに熊本の山中を最高時速 30 キロで走り回り、のびのびとした飼育環境で育った『走
る豚』は余計な脂肪分がなく甘みがあり、旨味が強く特有の臭みが少ないのが特徴です。
また、私が自宅で合わせて特に良かったのが、『鰯の梅煮』と『豚バラと茄子の味噌炒め』
です。
お醤油やお味噌との相性も良く甘辛いテイストの和食全般をカバーしてくれそうで
す。
この価格帯の欧州のピノノワールとしてはトップクラスのクオリティー。
バイザグラスで
も重宝するアイテムだと思います。
島之内フジマル醸造所
店長 河端 浩史
勤続 13 年目になり、ずっとフジマルのセレクトと共に歩んできましたが、
新たな試みとし
て『酒屋』目線ではなく、『ソムリエ』目線でのおすすめのワインをご紹介させて頂くこと
になりました。
皆様のワイン選びの助力になれば幸いです。